あと1か月で77歳の「喜寿」を卒業します。 建設・不動産の業界に身を置いて50年超。数え切れないほどの現場に立ち、土地を踏みしめ、建物という形を造り続けてきました。
しかし、ここ2年で二度の入院を経験し、今回は「病み上がり」の厳しさを痛感しています。 気力はまだまだ現役のつもりですが、体力のダメージは隠せません。特に「歩行」への影響は大きく、駅の階段や、場所の分かりづらいエレベーター・エスカレーターが、かつてないほど高い壁に感じられます。
長年、建物の維持管理を担ってきたプロとして、今の自分をこう捉えることにしました。 「今、私は自分という最高齢物件の大規模修繕を行っている最中だ」と。
現場なら納期が絶対ですが、体の修復に無理な突貫工事は禁物です。 2年前の自分と比較して焦るのではなく、1日1%の進捗を積み重ねる。今日、昨日より一歩多く歩けたなら、それは「工程表通り」の順調な進み具合だと自分を納得させています。
駅の不親切な案内や、階段の多さに直面して気づいたことがあります。 元気な時には見えなかった「街の欠陥」が、弱った時には牙を向く。このもどかしさは、当事者になって初めて深く理解できるものです。この「気づき」こそが、50年のキャリアに加わる新たな専門性になると信じています。
手すりを使うこと、エレベーターを迷わず探すこと。 これは妥協ではなく、無事故で家という拠点に帰還するための「徹底した現場管理」です。高い気力を、今は「無理をする力」ではなく、「自分の体をどう養生させるかという管理能力」に振り向けています。
11日間の入院で失った筋肉は、いわば地盤沈下のようなもの。 しかし、基礎さえしっかり固め直せば、上物は何度でも安定します。 足首を動かし、タンパク質を摂り、少しずつ歩幅を広げていく。この地道な「地盤改良」こそが、次の10年を支える土台になります。
50年以上、誰かのための家や街を造ってきました。 これからの時間は、「自分という物件」をいかに快適に、長く、美しく維持していくかというプロジェクトの総責任者として、一歩ずつ歩んでいこうと思います。
病み上がりは確かに厳しい。 けれど、現場で培った「不屈の精神」と「管理の知恵」があれば、必ずまた力強く地面を踏みしめられる日が来ると確信しています。